純喫茶アカペラ

 

歌が終わると、女性客が立ち上がって拍手をしていた。
「すごいですね、感動しちゃった!!!!!!!!」
「なんていうんでしたっけ、それ。」
「stand by meでしょ?」
「違うよ、曲じゃなくて歌唱法のこと。」
「えーっとぉ、なんだっけなぁ・・・」

「アカペラです。」
穏やかな表情で北山が答えた。

「正確にはa cappellaですけどね~♪」
発音良く黒沢が付け加える。
「黒沢うっさい。」
「まぁまぁてっちゃん抑えて。」

「こういうライブって毎回やってるんですか?」
「えーっとそれは・・・」
酒井が困った表情になる。

初めてなんだけどなぁ、どうするべきか。
評判よさそうだから恒例にすれば客足も増えるかもしれない。
予約制だからあらかじめ練習も出来る。
いやいや、いかんいかん。
でも今回はたまたま出来たかもしれないし、そもそも俺歌手じゃないし。
うーむ・・・


「えっとですねぇ、ライブは今日だけ―」
「次もやりますよ!!!!!!!!!!」
安岡がいきなり口を挟んだ。

「なっ!!!!」
予想外の一言に額を汗が伝っていくのがわかる。


「ねぇ、みんな?」
「ちょっと待て、勝手に決めるなよヤス。なぁ、次は流石に無理だよな?」
慌てて酒井がとめにかかる。

「なーにボケてんだか雄二は。」
「続けるに決まってんでしょ~?」
「酒井さんだって本当は歌いくせに、強がらないでくださいよ。」

「っ・・・お前ら。」

「ほらほらぁ、お客さんの前でゴチャゴチャしないのっ。お客さん、会計はこちらでーす。」
安岡はちゃっかりレジにつき会計をしている。

「このお店また来ますね!。」
「他の友達も誘ってきますね。」

「そのときは新曲を用意しておきますね。」
北山が微笑みながら答える。

「「楽しみにしてます!!」」
そういうと女性たちは帰っていった。

「最後、綺麗なユニゾンだったねぇ~。」
「ああ、いいもん聴かせてもらったよ。」
「僕らにとってはああいったお客さんの言葉が一番ですからね。」
「雄二、もちろん続けるよな、歌。」
「・・・。」
そういうと黙ったまま酒井は店の奥へ消えていった。

「っつ、なんなんだよ雄二はよぉ、歌いたいくせに。」
「結局続けるのかなぁ。」
「最終的にはあいつ次第だけどな・・・」

 

そして翌日―

北山に酒井を除く4人が呼ばれた。
「無用な心配だったみたいですよ。」
そういうと北山はノートパソコンのキーボードを叩き、あるサイトにアクセスした。
「ほら、ね。」
画面上に映し出されたのはこの店のホームページ。
そして、北山の指す所には宣伝文句が書いてあった。

『-上質な豆を使った美味しいコーヒーと、本格的なカレー、
 そして良質な歌をお届けします- 
                店長 酒井雄二 』


「はっ、素直じゃねぇなぁ。」
「酒井さんらしいね~。」
「昨日これやる為に店に残ってたんだね。」
「で、どうしますか新曲は。」
不意に北山が言う。

「新曲はもう決めてある。」

「っ!雄二!!!!!!!!!」
「酒井さんいつのまに?!」

「うるさいな・・・ほれ、楽譜だ。」

「もう少し素直になったらいかがですか?」
「よーちゃんの言うとおり。」
「早く練習するから無駄口叩くな、北山!!」
「はぁ、何でお前が仕切ってんだよ。」
「まぁまぁ、テツ。せっかくやる気になってるみたいだしさ~。」


僕らの新曲が完成されるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
 

end.