傘をあげる 1.雨宿り

 

「も~、買出しぐらい一人で出来るって言っただろう?」

「いや、まだ心配だし。」

「過保護な母親か!!いいかげんついて来るのやめてもらっていい?」

「え~。」

駄々をこねる村上。
まったくどっちが子供なのか・・・

「じゃあ昼ごはん黒ぽんに頼んでカレーにするよ?」

「行ってらっしゃい♪」

恐るべしぽんカレー効果。
流石の村上も4日連続カレーはきついらしい。

「あ、そうそう。」

「何?」

「折り畳み傘持ってけよ、雨降るかもしんねぇし。」

「いやいやいや、おもっきし晴天じゃん。」

「いいから持ってきなさい!!」

「降るわけないでしょ、もうホント母親みたい。行ってきま~す」

 

 

数時間後、買い物を終えて店を出た安岡が見たものは。


雨。


「・・・恐るべしてつママ。」


持ってきた傘をさし、器用に水溜りをよけながら歩く。


「ん、あれは・・・。」


安岡の視線の先には屋根の下で雨宿りしている女性がいた。
降ってきた雨は当分止む気配はなかった。

「あの、傘―使います?」

「えっ。」

「僕は家すぐそこなので、走っていけばいいですし。」

「でもそんな、悪いですよ。」

「いいんですよ、では。」

「あ、あの!」

「はい?」

「せめて連絡先でも教えてくださいませんか?傘お返ししたいですし。」

安岡は女性に店の住所と電話番号を書き、渡すとそのまま走っていった。

 

 

「っ~そうは言ったもののこの雨はキツイな・・・」

本当はあの場所から店、および村上のアパートまでは相当な距離があった。


結局着いた時にはびしょ濡れの状態だった。

「うっわ~、店入る前に着替えてこないとてっちゃんに怒られそうだなぁ。」

駆け足で店の横にあるアパートに繋がる階段を上がっていく。
部屋に入ると幸い村上の姿はなかった。
濡れた服を脱ぎ捨て、クローゼットから新しい服を取り出し着替える。


それにしてもさっきの人は、大丈夫だろうか?
雨のせいだといいけど、頬が少し濡れていた気がした。
どことなく悲しげな目をしていたし。
 
 でも―
 
「・・・かわいかったな。」

小さな声で呟く安岡の頬は淡いピンク色に染まっていた。