「それでねっ、でねっ!!」
「「へぇ~・・・」」
あの昨日の雨の日から同じ話を永久リピートしている安岡。
話は止まる気配がなく、黒沢と北山は疲労気味。
「その女の人がすっごい美人でさ~、って黒ぽん聞いてる?」
「ブラウンの髪でロングストレートで顔はすっごいかわいんでしょ。」
そりゃあ、あんだけ同じこと何回も言われたら流石の俺でも覚えるよ・・・
「なんだちゃんと聞いてるじゃんか♪」
カランコロン~
村上が入ってきた。
「おう。」
「あれ、てっちゃん今日も遅いね。どこ行ってたの?」
「いや、別に・・・」
「あやし~、デートとか?!」
「ヤス、てつに限ってそれはないとおもうな。」
「確かに!笑」
「うるせぇよ北山!!」
「僕も同意見だな~。」
「くっ、黒沢まで・・・!!」
何、俺ってそんなイメージ?!
「で、結局何なのさ?」
「やだ。」
「は?!」
「誰かあの子のことてめぇらなんかに教えるかっ!!」
「あの子?」
間。
「あああああああ!!!!!!!!!しまった!!!!!!!!!!」
「自分で言うなよてっちゃん。」
「あの子って好きな子のこと~?」
「うるせー、そうだよ!!!!!!」
こうなったら開き直ってやる!!
「その子って花屋さんで働いてたりする?」
唐突に北山が口を開く。
「え?」
何で知ってるんだ、北山?
「くすっ・・・図星みたいだね。何でわかったか教えてあげようか。」
「おい、もったいぶるな。」
「だって最近てっちゃん毎日のように花を店にもってくるじゃない。ほら、あそこの窓際の花だって。」
「そういえばそだね~。」
「僕も全然気づかなかった、流石よーちゃんだね。」
「恋のマジシャンの異名は伊達じゃねぇな。」
「そりゃどうも笑」
カランコロン~
「こんにちは・・・」
一人の女性が入ってきた。
「すいません、まだ準備中―って、あ?!」
ブラウンのロングストレート、顔は文句なしの美人。
「ヤス、もしかしてこの人ってー」
「奈美さん?!」
安岡が答える前に村上が答えていた。
「いつも店に来てくれる村上さん?」
「な、なんでここに?」
村上は戸惑いを隠せない。
「安岡さんって方に傘を返しに来たんですけど・・・」
「ぼ、僕です!」
安岡は慌てて答えた。
顔はすでに赤くなっている。
「先日はありがとうございました。あのつまらないものですけど、これどうぞ。」
手渡されたのはお菓子の詰め合わせらしかった。
「では、これでー」
彼女が帰ろうとしたその時、
「あの、よかったらコーヒー飲んでいきませんか?せっかく頂いたお菓子もありますし。」
北山が微笑みながら語りかける。
「え、悪いですよそんなの。」
「いいんですよ、どうせ暇だし笑」
安岡の目が輝いている。
「そうですよ、今日は予約も入ってませんしね。」
酒井が店の奥から顔を出した。
「店長の許可も出たみたいですし、どうぞ。」
北山が手を取り席へエスコートする。
「では、お言葉に甘えて・・・」
彼女は北山に連れられて少し顔が赤くなっていた。
「ちょっと北山~、厨房来てくれない?」
黒沢が声をかける。
「あ、わかりました。」
彼女を席につかせた後慌てて厨房に回る。
「ちょっと北山~、彼女口説かないでくれる?」
「黒沢さん、口説いてませんって。」
テクニック
「でも使ってんじゃんか、恋愛魔術。彼女顔赤くなってたぞ~?」
「ごめん、無意識に発動してたかも。」
「気をつけてよ、何人の女性が北山の魔術で落とされたと思ってんの。」
現にこの店のリピーターの大半が北山によって落とされた女性たちだった。
「だってかわいかったし・・・」
「北山までやめてよ~。すでにややこしいことになってんだからさ。
てつとヤスの好きな人が同一人物だなんて予想外のことだった。
これからどんどんややこしいことになっていくことは僕でも容易に想像できた。
「大丈夫だよ、多分誰も彼女とは付き合えないと思うから。」
「どゆこと?!」
「独り言だよ、気にしないで。」
・・・北山が何を考えてるのか僕にはわからない。
だけどとりあえずここは見守っておくことにした。
僕に出来るのはそれだけだから。