黒沢がテーブルに人数分の湯気のたったコーヒーカップを置いていく。
「当店オリジナルブレンドで~す♪」
「おいしい!!」
「でしょ?黒沢さんのコーヒーは日本一だもん。」
初めて見る彼女の笑顔、僕は今死んでもいいと思った。
「ヤス、今死んでもいいとか思ったでしょ。」
「ええっ、なんでよーちゃんわかんの?!」
「どうかしました?」
「いっ、いやなんでもないです!!」
・・・これだからよーちゃんは恐ろしい。
僕も、てつも酒井さんも黒ぽんも、みんなよーちゃんのこの読心術にはかなわない。
ときどきよーちゃんの笑顔が恐ろしく感じられる。
「それにしても奈美さんのお菓子もおいしいな。」
村上は満面の笑みで語りかける。
「てっちゃんが敬語使うとなんか変だね笑」
「や、ヤスっ!」
「確かに、超不自然だよ。」
「無理しなさんな、お前さんには敬語は使えないって。」
「そうそう、自然体が一番だよ~。」
「うう・・・」
「村上さん、お願いですから無理なさらないでくださいね?」
「奈美さん・・・」
「私、嘘とかそういう気遣い苦手なんです。だからさんなんて付けないで奈美って呼んで下さい。」
「ええっ!!!!!」
さっきの安岡じゃないが死んでもいいと真面目に思った。
まさかこの短時間でここまで接近できるなんて!!
流石俺様だな♪
「あ、もちろんみなさんも。」
あ・・・俺だけじゃないのね。
「はい、でも僕には奈美さんの方があってるかな~?」
「俺もそうかもしれませんな。」
「僕は奈美ちゃんで。」
「おい北山、さりげなくお前だけちゃん付けで呼んでんじゃねぇよ!」
「ヤスはどうすんの?」
「無視すんなって!」
「うるさいなぁ、そういうこと言ってると嫌われるよ?」
「うっ・・・」
「で、どうなのヤス?」
「ぼ、僕は―・・・奈美さんで。」
くそ、なんで言えないんだよせっかくのチャンスなのに。
とんだ臆病者だな、僕は。
「あ、そういえばまだみなさんのお名前伺ってないですよね?」
「僕は黒沢薫です。黒沢でいいよ~。」
「北山陽一です。僕は北山で。」
「酒井雄二。俺は酒井でも雄二でもかまいません。」
「俺は―」
「村上てつやさんですよね?今まで通りで笑」
「はい・・・。」
くっそ、下の名前じゃ呼んでくれねぇのかよっ!!
世の中そうそう上手くいくもんじゃねぇな。
「安岡さんは、下の名前伺ってなかったですよね?」
「安岡優です。」
「ってか、そのさん付けやめて君にしたら~?」
「確かに、ヤスは年下だしね。」
「じゃあヤス君はどうですか?」
「そ、それでいいです。」
ナイス黒ぽん!!なんか子供に見られてるよう様な気がするけど親近感は増したしね♪
「じゃあヤス君改めてお礼をいいます、ありがとう。」
「い、いやそんな、どういたしまして。」
「ヤス君、一つだけ聞いていいかな?」
彼女の顔が急に真顔になった。
「何ですか?」
「嘘ついたでしょ。」
「え・・・」
予想外の言葉に安岡は戸惑った。
「あの場所から家近いなんて嘘でしょ。」
「ごめんなさい。」
「なんで謝るの?悪いのは私なのに笑」
「いや、だって・・・」
「謝るのは私のほうだよ、ホントにごめんね。風邪ひかなかった?」
大きく頭をさげる。
「だ、大丈夫です。」
嘘。
結局あの後少し風邪を引いてしまった。
「そう、ならよかったけど。」
「大丈夫です、そんぐらいでコイツはどーにもならないから。」
「てっちゃんにいわれたくないんだけど…」
「丈夫な体だけだもんね~、自慢できるのは。」
「ってめ、黒沢っ!!」
「今日みんなやけにてっちゃんに厳しくない?笑」
「まぁ、日頃の行いが悪いからですな。」
「お前ら好き勝手言いやがって…」
「でも素敵だと思いますよ村上さん。」
「えっ!?」
「花束毎日彼女に送るなんて素敵じゃないですか。」
黙りかけた瞬間、北山が村上の足を蹴る。
「いや彼女いないんですよ。」
「そうなんですか?!じゃああの花束は?」
「それは―」
全員の視線が自分にに集中しているのがわかった。
俺は言わなくては、あの一言を…
「実は花が好きで、ほら男で花だけ買ってくのはずかしいじゃないですか~。」
「え~、意外ですね笑」
言えなかった…泣
くっそ、勝負はまだ始まったばっかりだからな。
ヤスには悪ぃが絶対譲らねぇからな!!
「「「はぁ。」」」
安岡・村上を除いた3人が一斉にため息をついた。
「どうかしましたか?」
「いえいえいえいえ、なんでも~。」
「そうそう、なんでもないです。」
「ご心配はございません!!」
…不自然すぎだよ3人とも。
まぁ、気持ちはわかるけどね。
僕としては安心したけど。
まさかてっちゃんがこんなに早く動くなんて。
予想外だ、僕もうかうかしてられないなぁ。
―でも、悪いけどてっちゃん僕は絶対譲らないからね。